「まるで鰻の寝床みたいなつくりの家だな」なんて、奥に長く続いている家のことを「鰻の寝床」と言いますよね。
本物の鰻が水の中でどんな様子で寝ているのかわからないので、鰻の寝床として表現しているのは、単純に鰻が細長いからでしょう。
「鰻の寝床」とは上手い表現だと思う反面で、細長い生き物は他にもいます。
たとえば蛇も長いですよね。
しかも蛇は家を守る縁起の良い生き物という言い伝えもあるので、家の作りを表すのなら、蛇の寝床でも良さそうなものです。
今回は「鰻の寝床」の意味や由来などについて解説します。
「鰻の寝床」の由来とは
家の敷地の間口が狭く、奥に長いつくりの家を「鰻の寝床」と呼ぶのは、生き物の鰻が狭いところに入り込む習性があることが由来だと言われています。
実際に、鰻は水の中でも岩と岩のすき間などに好んで入り込んで、そこで潜む習性があるそうです。
鰻を捕獲する時には、入口から奥に行くほど細くなり、引き返すことができない仕掛けを使います。
ほんとうに鰻が狭い入口を好むのですから、間口の狭いつくりの家を「鰻の寝床のような」と表すのは、生き物の習性が語源になったのでしょう。
「鰻の寝床」が京都や大阪に多い理由
「鰻の寝床」と呼ばれるような、間口が狭くて奥行きの長い建物は、京都や大阪に多いというのを聞いたことはありますか?
現在でも京都の古い家は、奥に長い建物が多いのです。
大阪では都市計画の整備で、「鰻の寝床」と呼ばれるような建物が並ぶ地域は減ったようですが、一部には残っているそうです。
京都や大阪と言えば、現在の首都である東京が江戸と呼ばれる街として栄えるずっと前から、にぎやかな街として発展していました。
京は天皇の御所のある都として、大阪(大坂)は京の都を支える台所として商人の街でした。
多くの人々が暮らす街だったので、現在の住民税や固定資産税のような租税公課にあたるものを徴収する際に、家の間口の広さで計算されたので、奥に細長い建物が増えたと言われています。
とくに商人は、人通りの多い道沿いに店を出したいのですが、間口が広ければ税金が高くなります。
そこで奥に長く続くような店舗兼住宅を作ったのが「鰻の寝床」が増えた理由だと言われています。
今の時代でも、道路に面した間口の広さは土地の評価を左右します。
ということは、固定資産税にも少しは影響する可能性もあります。
昔のように間口によって大きな差があるわけではないでしょうが、少しはその名残もあるわけですね。
まとめ
京都の街の建物は、新しく建て替える時にも街の景観に馴染むような工夫がされています。
たとえばマクドナルドとかユニクロなど、全国展開しているチェーン店の看板も、京都では茶色ベースになっています。
街の景観を守る条例があるからなのでしょうが、京都の景観を守りたいという気持ちは、日本人に共通しているのかも知れませんね。