【お蔵入り】という言葉は間違いだった?語源を知ると誤用がわかる!

ことばの雑学

「お蔵入り」といえば、日の目を見ないでお蔵に入れられるものという意味で理解されていると思います。

放送予定だったテレビ番組が、放送されずにそのままお蔵入りとか。

撮影を終えていた映画なのに、公開されずにお蔵入りなど。

お蔵は今の倉庫ことですが、具体的に倉庫に入ったままになるかどうかではなく、人の目に触れることがなくなるという意味で「お蔵入り」と表現されています。

しかし「お蔵入り」という言葉は、じつは誤用が広まったとも言われているのです。

いったいどういう誤用から広まったのか、調べてみましょう。

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「お蔵入り」の意味

「お蔵入り」の意味を調べてみると、

作品の発表をとりやめることの俗称

とあります。

しかし、それは「お蔵入り」ではなく単なる「お蔵」だけでも通じる言葉として書かれています。

「お蔵に入り」や「お蔵にする」とは、「お蔵」という言葉から変化したのです。

「お蔵入り」の語源

「お蔵入り」という言葉の語源は、誰が考えても昔の倉庫の「お蔵」だと思うはずです。

むすめ
むすめ

だって「お蔵入り」だもの

息子
息子

お蔵を想像するのが自然でしょ

それはそうですよね。

ですが、調べてみると「お蔵入り」の語源は「お蔵」の事ではなかったようなのです。

「お蔵入り」という表現は芝居の世界で生まれました。

「おくらになる」とか「おくらにする」という言い回しです。

庶民の娯楽であった芝居は、人気の演目はロングラン公演になったり、再演が繰り返されます。

人気の役者が出演するだけじゃなく、人気の劇作家の書いた作品は大入り満員が続くので、公演期間が延期されることもあったそうです。

しかし、評判の悪い演目は客の入りも少ないため予定の公演期間よりも早く切り上げることがありました。

さっさと打ち切りにして、客を呼べる演目に切り替えなければ儲けはないので、その判断はシビアだったのでしょう。

この時に「客が入らないから、さっさと千秋楽にしてしまおう」というのが「お蔵入り」の語源なのです。

千秋楽(せんしゅうらく)のことは、現在の演劇の業界でも「ラク」と省略して使います。

公演最終日のことを楽日と言ったりします。

芝居の世界では、お客様に喜ばれて、無事に最終日まで公演が続けられたことはおめでたいことなので、「千秋楽おめでとうございます」なとどお祝いの言葉を受けることもあります。

しかし評判が悪くて早々に打ち切る場合はおめでたくもないし、千秋楽と呼ぶのも違和感があったためか、ひっくり返して「くらになる」と言ったのが始まりだと言われています。

それが時代の流れの中で「お蔵になる」となり「お蔵入り」となっていったと考えられているのです。

「お蔵入り」は大きく誤用というわけではないのですが、一般的に広く知られるようになったことから、語源と意味がわかったとしても間違いではなくなったのです。

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「お蔵入り」の類語

「お蔵入り」の類語です。

頓挫する

「頓挫する」とは、勢いが急に弱まることを表す言葉です。

途中で行き詰り、そのまま中止になる時などに使います。

ボツになる

「ボツになる」は、没書が語源です。

原稿などの出版物に載せられない、採用されない作品のことを表しています。

暗礁に乗り上げる

「暗礁に乗り上げる」とは、物事が進まなくなることを表しています。

語源は船の運航中に水中の岩場などに船底が乗り上げてしまい、身動きできなくなることです。

まとめ

「お蔵入り」の語源には蔵はまったく関係ないとは、知らなかったので驚きました。

まさか千秋楽の「楽」がひっくり返ったなんて・・・。

そう考えると、昔から芸能の世界では言葉をひっくり返して業界用語にしていたのかも知れませんね。