2020年は、世界中が新型コロナウイルスの脅威にさらされました。
特効薬もなく、ワクチンも未開発のまま、何か月にもわたって感染の恐怖と隣り合わせの生活を強いられました。
飲食業や観光業の方々などは、大打撃を受けています。
エンタメ業界もそうです。
とくに観客を入れる演劇やライブなどは、無観客の生配信ライブなどで何とか生き残りのために頑張るしかありませんでした。
その中で動画配信サービスの「投げ銭」というシステムを使って収益を上げる方たちも増えてきました。
それまでは、自分たちをアピールするために使っていた動画サービスを使って、ライブなどが行えない損失を少しでも埋めようとする努力です。
最近になってよく耳にするようになった「投げ銭」というシステムですが、いったいいつ頃からあったのでしょう。
そもそも「投げ銭」とは何が始まりだったのか、まとめてみました。
「投げ銭」の始まりとは
「投げ銭」は、「銭」すなわちお金を投げることを表す言葉です。
お金を投げるなんて、お正月の初詣のお賽銭くらいしか思い浮かばないでしょうが、「投げる」ではなく「投じる」と言い換えると「投げ銭」のイメージが浮かびやすいと思います。
「投げ銭」は、もともと人々が行き交う場所で芸を見せる大道芸人が始まりです。
大道芸人は日本だけでじゃなく、世界中にいます。
日本では旅をしながら曲芸などを見せる大道芸人が、江戸時代よりもずっと古くから存在しました。
大道芸人は、芝居小屋のような場所にお客を集め、観覧料を集めて芸を披露するわけではありません。
人々が集まりやすいような場所で、芸を見せて人の足を止めさせます。
そして、その芸に対する評価として、お金を集めます。
お金を集めるための箱を持って回ると、それぞれに芸に対する対価を入れてくれるわけです。
これが「投げ銭」の始まりです。
今でも、ストリートミュージシャンなどが駅前の路上などでギターの弾き語りをしていると、目の前に置かれたギターケースにお金を投げる人もいます。
昔からの投げ銭システムは、今も続いているわけです。
「投げ銭」ライブのメリットとは
「投げ銭」のシステムを使ったライブが最近は増えていると言われています。
動画配信ではなく、実際に生のライブを行う場合でも「投げ銭」で開催することもあるのです。
「投げ銭」システムでライブを行うと、前売りチケットを売りさばく必要がなくなります。
「投げ銭」というシステムそのものが、集客のハードルを下げるわけです。
まだ無名のアーティストなどには、ある意味ではチャンスでもありますし、かなりの冒険でしょう。
もしも観客が評価してくれなければ、最低の経費すら稼げないかも知れないのです。
ですが、もしも初見の観客が気に入ってくれれば、思いがけない収益を上げられる可能性もあります。
ファンを増やすきっかけにもなるので、「投げ銭ライブ」を活用しているのでしょう。
「投げ銭」と「おひねり」の違いとは
「投げ銭」と同じような意味合いで使われるのが、大衆演劇などで見られる「おひねり」です。
「おひねり」の語源は、歌舞伎が庶民の娯楽だったころに、贔屓の役者にお金を紙で包んで捻ったものを舞台に投げ入れたことが由来になっています。
どちらも「○○○円」と金額が決まっているわけじゃないので、同じようなものなのですが、あえて違いをあげるとすれば、おひねりはチップのようなものです。
チップは日本にはあまり根付いていない文化ですが、既定の料金に加えて、自分へのサービスに対してのお礼としてお金を渡す習慣です。
大衆演劇では、入場料に加えて、自分が好きな役者におひねりを渡しますから、芸への対価としての「投げ銭」とは少し違うのでしょう。
歌舞伎の舞台が語源?「どんでん返し」の由来についてはもチェックしてみませんか。
まとめ
新型コロナウイルスの脅威が収まれば、動画配信によるライブをするアーティストは少なくなるでしょうね。
「投げ銭」というシステムで生き延びられたとしても、やはり観客の前でパフォーマンスできた方が幸せでしょうから。