「あの人は演歌界の大御所だよ」とか「いよいよ大御所のお出ましだね」のように、そのジャンルの大物に対して使われる「大御所」という表現。
よく耳にする言葉ですから、意味を知らない人はほとんどいないと思います。
では、なぜそのジャンルの大物のことを大御所と呼ぶようになったのでしょうね。
そもそも大御所の語源は何なのでしょう。
今回は大御所の由来や使い方を解説します。
大御所の意味とは
大御所とは、
その道の大家として、絶大な実力と権威を持っている人のこと。
また、現役を引退して隠居の身になった後も、大きな影響力を持っている人のこと。
このような人物を表現する時に使う言葉です。
日常的な会話で使われるのは、どちらかと言えば前者の方でしょうか。
その道で絶大な力を持つ大物に対して、使うことが多くなっています。
大御所の語源とは
大御所の語源は、「御所」から想像できます。
御所とは、天皇が暮らす住まいのことです。
現在も、皇室の方々が生活する住まいのことを「御所」と呼んでいます。
大御所とは、天皇の位を退いた方が暮らす住まいのことでした。
そして、引退した方の尊称として「大御所」と呼ばれるようになったのです。
つまり、隠居後も大きな影響力を持つ人のことを大御所と呼ぶようになった語源は、住まいの呼び方が由来だったのですね。
大御所と呼ばれる人とは
現在は、さほど大物でもなく、それほど大きな影響力を持っていなくても「大御所」と呼ぶこともありますが、もともとは大御所と呼ばれる人はとてつもなく高貴な位の方だったのです。
戦国時代になり、武家が力を持つようになると、大御所と呼ばれる人も天皇にゆかりのある人だけではなくなります。
歴史上で大御所と呼ばれた人物として有名なのは、江戸幕府初代将軍徳川家康公でしょう。
徳川家康は、織田、豊臣の時代をじっと耐えて、江戸幕府を揺るぎないものに作り上げると、隠居して息子の徳川秀忠に将軍の座を譲り、現在の静岡県の駿府城で暮らします。
しかし、引退した後も家康の影響力は絶大でした。
「大御所様」と呼ばれて、2代将軍秀忠の政治にも目を光らせていたのです。
また、江戸幕府11代将軍の徳川家斉公も大御所と呼ばれた人物です。
家斉は15歳という若さで将軍の座に就任し、50年の長きに渡って将軍の座にいました。
引退後も大御所と呼ばれ、影響力を持ち、幕府の実権を手放さなかったと言われています。
大御所の類語
大御所のもともとの意味を考えると、今のように軽々しく「○○界の大御所」と使うのは気が引けます。
引退した天皇のお住まいが大御所の由来なのに、あまりにも大御所が多過ぎるような・・。
そこで他の呼び方を探してみました。
「大物」も大御所と同じような意味で使えますよね。
たとえば演歌界の大御所と呼ばれる人は、他では大物演歌歌手と呼ばれることもあるでしょう。
他にも「御大」という呼び方もあります。
「御大」は、集団、団体、グループの頭の人のことです。
大御所は本来は引退しても影響力を持っている人のことを指していましたが、今ではその分野で力を持っている人のことを表す言葉として使われるので「御大」とも共通しているのではないでしょうか。
まとめ
歴史上で大御所と呼ばれていた人と比べれば、今の大御所とは随分と大物っぷりに差があるような気がしますね。
その道の実力者という意味よりも、引退後も大きな影響力を持ち続ける人物の呼び方だったので、使い方も変化してきたのでしょう。