さじを投げるとは?どんなことから生まれた言葉なの?

ことばの雑学

さじを投げるとは、どうすることも出来ずにお手上げという意味で使われる慣用句です。

では、なぜお手上げ状態のことを「さじを投げる」というのでしょう。

さじを投げるという状態でお手上げの状態を表現した由来を解説します。

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さじを投げるのは医者のこと

さじを投げるという言葉は、医者が手の施しようがなく、効果のある薬も考えつかない状態に追い込まれると、薬を調合する匙(さじ)を投げ出してしまうことが由来です。

医者の手に負えないような重症の人を前にして、何もできないと「医者も見放す」というよりも「医者がさじを投げる」と表現したことがお手上げの表現のきっかけになったと言われています。

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医者のことをさじと呼ぶのは?

さじを投げるとは、薬匙という薬の調合の時に使うものを投げ出すことですが、現代社会では薬の調合は薬剤師の仕事です。
医者は診察をして、必要な治療をして、薬の処方をするのが仕事です。

ですが、昔の医者は病気に対しては薬を調合することが主な治療方法でした。

中国から漢方が伝わり、日本古来の伝承医学なども織り交ぜた医学は薬の調合がメインです。

それを象徴するように、江戸時代には医者のことを「御匙(おさじ)」と呼んでいました。

医者は薬匙を使って薬を調合することが仕事なので、医者のことを御匙と呼ぶようになったのです。

このことからも「さじを投げる」という慣用句が医者も見放すような状態からお手上げを表現するようになった由来がよくわかりますね。

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医者は家元制度だった

日本の医学が変わったのは、明治以降です。

それまでは漢方を軸とした東洋医学ですから、医師の資格も曖昧なものだったようです。

もともと漢方医学は古典があり、そのレシピ通りに調合するのですが、日本ではその古典通りではなく、日本独自にアレンジしてしまいました。

薬の調合方法によって、医師の腕の良し悪しの評判になったのです。

それほど明治以前の医学は薬の調合が大切だったわけです。

症状を診て原因を探り、その原因に効果のある薬を調合できれば腕の良い医者というわけです。

評判の良い医者になると、薬の調合方法は門外不出として、家元制度で守り抜くこともあったそうです。

しかも、病気の原因が目に見えぬ力が及ぶ霊的なことにだと考えられたので、医者の薬よりも神仏に頼ることも多かったのです。

医者がさじを投げた患者でも、神仏の力で快方に向かったという話も歴史上にはよくある話です。

医者ができることが今よりも少なすぎるので、さじを投げることも多かったのでしょう。

まとめ

さじを投げるという言葉の前に医者が付かなくても意味が通じるようになりました。

今の医学は進歩して、さじを投げる前にできることが色々ありますから、さじを投げない医者が増えていると思いたいです。