「~させていただきます」という言葉使いは、丁寧な話し方をしているイメージを持っている人が増えているようです。
飲食店をはじめとする商品とサービスを提供する場所では、「~させていただきます」の連呼です。
それだけではありません。
例えば、芸能人が入籍を報告する際に世の中にメッセージとして発表するとき

このたび、
私○○は、○○さんと
入籍させていただくことになりました。
このようなコメント、よくありますよね。
もう、当たり前になってしまったので、違和感もないかも知れません。
ですが、この使い方って変ではないのか?
よくよく考えてみると、ちょっと変だな・・
そう思ったので、余計なお世話ですが、掘り下げてみました。
「~させていただきます」の使い方
「~させていただきます」の使い方を考えると、2つのパターンがあるというのがわかってきました。
「~する」の謙譲語
飲食店に入るとすぐに店員から「何名様ですか?二名様ですね。ではお席にご案内させていただきます」と言われて着席します。
この場合の「~させていただきます」は前述の「入籍させていただきます」と同じです。
「~する」の謙譲語として使っています。
謙譲語というのは、わかりやすく言えばヘリ下った表現です。
大げさに言えば「私がそのようなことをするのは厚かましいことで申し訳ないのですが、あなたの許しを得て、~するのです」というくらいの表現なのです。
飲食店で席に案内するのも、芸能人が入籍するのも、誰かの許しを得てから申し訳なさそうにすることではないのです。
「~する」の謙譲語として使う場面ではないのに、世の中では飛び交い過ぎなのです。
いつの日からか、丁寧な言葉使いをしている印象を与える表現として、多用されています。
一方的な宣言
「~させていただきます」のもう一つのパターンは、相手の気持ちを考えずに、一方的に自分の意思を宣言する場面です。
このパターンの定番と言えば「もう実家に帰らせていただきます」とか「会社を辞めさせていただきます」と相手のことは関係なく、自分が決めたことを一方的に言い放つときに使います。
「好きにさせていただきます」
「思うようにやらせていただきます」
謙譲語であったはずの「~させていただきます」なのに、相手の気持ちを全く無視して一方的に宣言するときに使う言葉としても定着しているのが不思議なのです。
丁寧な言葉で言っているけれど、あなたの意見や考えには一切耳を貸しませんよ!という意味なので、両極端なのです。
一方的に宣言したいときに「~させていただきます」や「~させていただく」というのは、無礼や失礼を承知の上でのことなのでしょう。
「~させていただきます」を使うとき
「~させていただきます」を使うのは、相手との立場に上下関係があることが前提です。
上司と部下、師匠と弟子というような関係です。

君、顔色が悪いぞ
具合が良くないのか?

少し風邪気味なのか
頭痛がひどくて・・

それは無理してはいかん
今日は早退したらどうだ?

それではお言葉に甘えて
早退させていただきます
この場合は、上司の許可を得て早退するわけですから、「早退させていただきます」を使うのが正しいのです。
さらに、感謝の意味として「~させていただきます」を使うこともあります。
例えば、頼まれごとをしたときに「喜んで~させていただきます」という場合です。
慶事に使うことが多いですね。
披露宴でスピーチを頼まれたときに「ひとことお祝いの挨拶をさせていただきます」というようなときには、その場にいる人たちへの感謝を込めて「~させていただきます」と表現するのは間違いではないのです。
冒頭の例で芸能人が入籍発表するときの「入籍させていただくことになりました」というのは、感謝の意味として使っているのだと思いますが、入籍する許可を得るわけでもなく、頼まれたことへの感謝でもないので、やはり正しい使い方とは言えないのでしょう。
「入籍しました」とシンプルな伝え方じゃダメなのか?と思ってしまいますね。
まとめ
「~させていただきます」については、深く掘り下げるとキリがないほど世の中では多用(乱用ともいえるほど)されています。
そして、調べれば調べるほど今後は「させていただきます」を使いにくくなりました。
そもそも謙譲語として、目上の人の許可を得て行動しなければいけない事柄は、年齢を重ねるとともに減ってしまうので、使う場面はさらに少なくなっていくのでしょう。