取っ手が付いていて、注ぎ口のある鍋のことを「ゆきひらなべ」といいます。
家庭用の調理器具としてもおなじみの鍋です。
でも、この「ゆきひらなべ」は「雪平鍋」と「行平鍋」があります。
同じ読み方ですが、使われている字が違うのです。
なぜ「雪平鍋」と「行平鍋」があるのでしょうか。
「ゆきひらなべ」の由来について解説しましょう。
雪平鍋と行平鍋の違い
雪平鍋と書いてある鍋と行平鍋と書いてある鍋を両方並べてみればわかりますが、どちらも同じものです。
読み方が同じで同じ物ですが、文字だけが2種類あるのです。
なぜ2種類あるのか、その理由は定かではありませんが「ゆきひらなべ」の由来を調べると、雪平鍋と行平鍋になった理由もわかるはずです。
行平鍋の由来
「ゆきひらなべ」の由来は、在原行平が関係していると言われています。
在原行平は、在原業平の兄です。
この在原行平という人物が須磨という土地で蟄居(謹慎のこと)していた時に、海水を炊いて塩を作った時に使った鍋だから、同じような形状の鍋を行平鍋と呼ぶようになったという説があります。
在原行平が使っていたのは陶器の平鍋だったのですが、その後に扱いやすいステンレス素材が主流になりました。
雪平鍋の由来
雪平鍋の由来は、在原行平が塩を作った時に、真っ白な塩が雪のように見えたからと言われています。
ですが、行平鍋でお粥を炊くようになり、お粥が白い雪のように見えたからという説もあります。
もしも後者の由来が正しいとすれば、精米技術が進み白米を食べるようになった江戸時代が雪平鍋が生まれたことになります。
在原行平に関するメモ
調理器具の定番になっている行平鍋の由来になった在原行平には、他にも由来の物があります。
1枚の板に1本だけの弦を張った須磨琴と呼ばれる一弦琴は、須磨での蟄居生活の寂しさを紛らわせるために、浜で見つけた木の板で作り演奏したと言われています。
そして、愛猫家の間では有名な行平の歌があります。
「立ち別れ いなばの山の みねにおふる まつとし聞かば 今帰り来む」
百人一首の第16番のこと行平の歌が、迷い猫が帰るおまじないになっているのです。
おまじないの方法はいくつかあります。
2、歌を書いた紙を猫の食器の下に置く。
3、半紙に書いて家の東側の壁に貼る。
この他にも色々あるようですが、実際に行方不明の猫が帰ってきたという反響があり、日本全国の愛猫家に知られています。
まとめ
雪平鍋も行平鍋も違いはなく、同じ物でした。
間違いではないので、これからは迷うこともありません。
しかし、在原行平という人が須磨で謹慎させられた時期がなければ、行平鍋(雪平鍋)という名称もなかったわけですね。