娘三人持てば身代潰すというのは、娘を嫁入りさせるために嫁入り修行をさせて、準備万端整えることに莫大な費用がかかるということの例えです。
今ではほとんど使われなくなったことわざですが、私が育った尾張名古屋では今も普通に使っています。
さすがに若い世代では使うことはなくなっていますが、意味くらいは通じるのではないでしょうか。
なぜ他の地域ではこのことわざが使われなくなってきたのに、名古屋周辺では今も使われるのかご説明しましょう。
尾張地方の嫁入りはド派手
名古屋を中心とした尾張地方や、徳川家康の地元である三河地方では、結婚式が派手なことが有名な地域です。
とにかく演出がド派手で、ゴンドラや馬車などを使い始めたのは、名古屋の結婚式場が多かったようです。
名古屋の人は見栄っ張りだから・・とか色んな理由が言われていますが、歴史的には尾張徳川家が地域の経済活性を測ったためだと言われています。
嫁入り道具がスゴい
じつは名古屋の結婚式の派手さよりも、嫁入り道具の方がすごいのです。
家具一式、家電製品一式、専用の自家用車などを揃えるだけじゃなく、箪笥の中には季節の着物、喪服、留袖などを誂えて入れています。
しかもその嫁入り道具を運ぶ専用のトラックがあって、おめでたい紅白幕がかかっています。
その紅白幕を付けたトラックが配送のために狭い道に入った時、すれ違うのが厳しいような場所では、絶対にバック(後退)させないのが愛知県民のマナーです。
おめでたいことなのに、後退させるなんて縁起が悪い!というわけですね。
現在でも、愛知県内では嫁入り道具を運ぶトラックが3台くらい連なって走るのを見かけることがあります。
それを見るたびに、「娘三人持てば身代潰すという」ということわざを思い出すのです。
嫁入り道具を披露する
今ではよほど少なくなってきましたが、今でも愛知県の名家では、嫁入り道具が運び込まれると、その中を披露するために近所の人を集める風習が残っている地域があります。
どれほどの嫁入り道具を持ってきたのか、値踏みされるという何とも嫌な風習です。
しかし、それくらい愛知県周辺の地域では嫁入り道具に力を入れていました。
だからこそ、娘が三人もいて、それぞれに立派な嫁入りの準備をするとなると、よほど裕福な家じゃなければ貯金も使い果たして、借金するか土地や家を売るしかなくなるほど大変だというわけです。
実際に娘が三人いても家がつぶれるようなことはありませんが、そのくらいの出費は覚悟しないといけないのです。
今では結婚資金も自分で働いて貯めて、嫁入り道具もとくに準備しないケースが増えています。
全国的に見れば、嫁入り道具専用のトラックが存在することが珍しいのです。
ナシ婚、地味婚なんて言葉がはやり始めた頃から、名古屋でも派手な結婚式が少なくなっているほどなので、娘三人持てば身代潰すということわざが使われなくなってきたのも納得です。
まとめ
愛知県に生まれながらも、嫁入り道具で親に負担をかけなかった立場からは、ちょっと妬み半分で書いてしまいました。
嫁入り道具を派手にそろえることで、経済の発展を望んだことが始まりだったので、悪いことではないのでしょうね。