無視とは、まるでそこに存在しないかのような態度のことです。
「話しかけたのに、まるで聞こえないかのように無視する。」
「目が合っているのに、見えていないような様子で無視する。」
「電話の着信やメール、メッセージを無視する。」
このように、「無視」という言葉はとてもよく使います。
また、「無視」のことを「しかと」と言うことがありますね。
では、無視することを「しかとする」と言うのはなぜなのでしょう。
「しかとする」という言葉の語源について調べてみました。
「しかと」の語源
「ちょっと、無視しないでよ」を「ちょっと、しかとしないでよ」というのは、かなり年齢層が高くても理解できると思います。
それほど広い世代に定着しているのですから、古くから使われてきた言葉だと考えられます。
無視するという意味の「しかと」の語源は、花札の絵柄が由来だと言われています。
花札で遊んだことがない人には、何のことだかさっぱりわからないでしょう。
花札には、季節を表す色んな絵柄が描かれています。
その絵柄によって点数が決められているのです。
無視することを「しかと」と言うようになった由来は、花札の絵柄の鹿だと言われています。
10月の札には、紅葉したもみじの葉と鹿が描かれています。
その鹿は、横向き描かれており、まるでこちらを無視するような視線に見えることから「しかと」と言うようになったと伝えられているのです。
鹿の札が10月の札だから、鹿と十で「しかと」という説と、鹿の札の点数が10点だから「しかと」になったという説があります。
どちらにしても、花札の遊びが語源になったのは、間違いないようです。
「確と」とは関係ない
「しかと」という言葉は、もともとあった言葉ではなく、俗語として世の中に広まったものです。
無視のことを言いかえた「しかと」という言葉があまりにも広く定着してしまったので、「確かに」という意味の「確と(しかと)」と間違えそうで使い難くなってしまいます。
「確と承りました」とか「確と頼みます」など、社会人なら使う場面は多いのですが、万が一にも聞き間違えられてしまうと怖いので、「確と」よりも「確かに」と言った方が安全な気がしてしまうのですよね。
花札が語源になった言葉
無視のことを「しかと」というようになったのが、花札が語源とは知らずに使っている人が多いと思います。
ですが、他にも花札が語源とは知られていない言葉は複数あるのです。
たとえば「ピカイチ」です。
多くの中で一番優れていることを「ピカイチ」と言いますが、これも花札が由来なのです。
7枚の手札の中で、1枚だけが高得点で、残りの6枚はカス札しかないことだったのですが、いつの間にか一番優れているものを指す言葉になりました。
花札のルール的には、嬉しくないことだったのに、俗語として世の中に広まると意味が変わってしまったのです。
他にも「ピンキリ」も花札が語源と言われているので、意外と知らずに使っているのですね。
まとめ
無視のことを「しかと」というのは、花札が語源の俗語なので、正しい日本語として使える言葉ではないのです。
世の中に広まったきっかけは、戦後だと言われています。
戦後の復興が進み、若者たちが豊かな時代を楽しむようになった頃に流行り始めたようです。
その当時の若者は、すでに高齢者なので、幅広い世代に使われているのも納得ですね。