感情を表に出す時に使う言葉を正しく使えないと、誤解を生むことがあります。
「憮然とした表情で・・」とか「憮然とした様子で」などはどのような気持ちを表現するのでしょうか。
正しい意味を知らないで使っている人も少なくないようです。
「憮然とする」のはどんな気持ちの時なのか解説しましょう。
あなたは「憮然」の意味を正しく理解しているのか、チェックしてみませんか。
一般的な「憮然」の使われ方
たとえばニュース番組を見ていると、何か問題を起こした著名人や政治家、企業のトップなどが記者会見が中継されることがあります。
自分自身の問題や疑惑を釈明するための会見ですから、厳しい質問を受けることになります。
厳しい質問を受け続けていると、次第に険しい顔になってくるものです。
その様子を見ていた記者が「ずいぶん憮然としてらっしゃいますが」というと、「いえいえ、そんなことはありません」と答えているような場面を思い浮かべてみてください。
この場面でのやり取りは、憮然という表現を正しく使えていると思いますか?
質問する側も、答える側も、憮然とする意味を理解しているのでしょうか。
憮然とするとは?
憮然の正しい意味とは、失望してしまうとか、呆れてしまうことです。
憮然の「撫」の字は、がっかりするとか、むなしいという意味なので、「憮然とする」というのは期待していた通りにならなくてがっかりしている様子を表しています。
前述のような記者会見の場面を想定してみると、「憮然」は不機嫌な様子や怒りの表情という意味として受け取っている人がほとんどでしょう。
一般的に「憮然とした表情」は、怒りに満ちた、不満そうな表情のことを表す言葉と思っている人が半数以上を占めているからです。
その使い方が定着してしまったので、間違いだと感じる人は少ないでしょうが、本来の「憮然」の意味は怒りや不満とは別だったのです。
しかし、もしも例としてあげた記者会見でも「憮然」の意味が間違いとは言えない解釈もできます。
問題を起こしたことを謝罪したり、疑惑に対する釈明の記者会見を開いたのに、まったくその効果がなくて、理解されるどころか余計に事態を悪化させるような結果になれば、失望してがっかりするでしょう。
そのような意味でなら「憮然とした表情」は正しい使い方です。
しかし、双方が正しく意味を理解していないと、会話がかみ合わないでしょうね。
正しい使い方とは?
憮然の正しい使い方を考えてみましょう。
がっかりしてしまい、失意でぼんやりしてしまう様子が憮然なので、例えばこのような使い方が正しいのではないでしょうか。
このようなシーンで「憮然とした表情」は違和感があるのなら、すでに憤りや怒り=憮然になって定着してしまったからではないでしょうか。
憮然の類語
「憮然とする」という意味が世の中で正しく認識されていないので、使う場面を考えないと失礼になるかも知れません。
「その使い方は誤用ですよ」と指摘するわけにもいきませんし、「憮然は誤用されているので正しい意味は・・」とわざわざ説明することもできません。
紛らわしいので、「憮然」と同じような意味の言葉を探してみました。
「がっかりする」
「失望する」
「肩を落とす」
このような表現であれば、思い通りにならなかった時の様子を表すのに誤解されないと思います。
まとめ
憮然とした表情というのが、がっかりしたとか失意のこととは知らずに使っている人が多いのが現実です。
正しい意味が徐々に変わってしまった言葉の一つですね。
多くの人がすでに誤用された意味で使っているので、間違いとは言い切れなくなっているのでしょう。