「悪い人じゃないんだけど、キザなのがちょっとね・・」
「そんなキザなこと言われると、こっちが恥ずかしいわよ」
このように、「キザ」は褒め言葉として使うわけではありません。
かっこつけている人に対して、批判的な意味として使う言葉ですよね。
ところで「キザ」って言葉はなぜ生まれたのでしょう。
かっこつけている人に対して使うようになった由来もよくわかりません。
そもそも、なぜ「キザ」となったのか、語源はどこからなのでしょうか。
今回は、「キザ」の意味や語源について解説します。
「キザなやつ」とはどんな人
「キザ」とは、気取った服装や言葉、仕草などの様子のことです。
気取った服装や言葉、態度とは、いかにも「上品な人」や「オシャレな人」のように装うことです。
ほんとうに上品でオシャレな人であれば、気取った様子に見えることはないので、「キザ」とはその人物には不自然で似合わないのに無理していて、しかもこれ見よがしに気取っていることを意味しています。
時々「キザ」はカッコイイことと勘違いして使われているのですが、カッコイイ状態を褒めるために使うのではないので、誤用には気を付けなければいけません。
カッコイイのではなく、カッコつけて気取っていることのですね。
「キザ」の語源
「キザ」とは、それほど悪い意味の言葉とは思われなくなっていますが、語源を知ると「言われたくない」と思うはずです。
「キザ」を漢字にすると「気障」です。
この字から想像できると思いますが、「キザ」の語源は「気に障る」なのです。
気に障る→気障り→気障になっていったのです。
A部長の指示に出し方って、いちいち気に障るよ。
わかる、イラっといするよね。
自分ではカッコいいと思ってやってるんだろうな。
気障(キザ)だと思われているなんて、自覚なし・・。
このように、皮肉や批判を込めて使われます。
他人から見て、気に障るような服装や言動なので、「キザ」と言われて喜んではいけませんね。
気障(キザ)は江戸時代にはすでに使われていた言葉です。
すでに江戸時代には略語が数多く生まれていたのですが、その中の1つです。
キザに類義する言葉
「キザ」と同じように、気に障る様子を表す言葉を集めてみました。
「ナルシスト」は、わかりやすく言えば自分のことが大好きなことです。
批判する意味ではないのですが、自分のことが好き過ぎて自惚れているという皮肉を込めて「ナルシストだよね」などと言われます。
「虫の好かない」は、昆虫の虫ではなく、「虫の居所が悪い」というような時に使われる虫と同じです。
理屈ではなく、何となく合わない人に対して使います。
「鼻につく人」は、鼻がニオイを察知しても簡単に悪臭から逃げられないように、避けたくても避けられない嫌な相手に対して使います。
「嫌味なやつ」や「気に食わないやつ」など、「気に障る」と通じる意味の言葉であれば「キザ」の類語と考えても間違いではないはずです。
ただ、あまりにも「キザ」という言葉がカッコつけている様子に限定されるようになったので、「気に障る」という言葉の由来は薄くなってしまったのでしょう。
「キザ」の対義語
気に障ることが語源になった「キザ」と対義するのは、「粋(いき)」ではないかと思います。
「粋」とは、服装や言動があか抜けていて、洗練されている様子を表す言葉です。
「あの人の振る舞いが粋だね」とか「粋なこと言うね」など、自然な色気やセンスを褒める時に使う言葉です。
気障と同じく、粋も江戸時代に生まれた言葉です。
粋がその人の自然な魅力を表すのに対して、いかにも気取った様子を表すのが気障なので、相反する意味ではないでしょうか。
キザでクールな・・はオカシイ
「クールな人」と言えば、冷静な人のことを表しています。
ですが、「クール」はカッコイイという意味で使うことも増えています。
冷静な態度やさわやかな様子のことです。
人や物など、対象は色々ですが「キザでクールな」と重ねて表現することもあります。
「キザ」の語源を考えると、気に障るほど冷静な様子ということにもなるため、わざわざ重ねる必要もないのではないかと思ってしまいます。
「カッコいい」だけよりも強調して表現したい時には効果的ですが、正しい表現とは言い難いので、使う場面は選んだ方が良さそうですね。
女性に対して「キザ」は使わない?
「キザ」という言葉は、男性に対して使うことがほとんどだと思いませんか?
「キザな女だね」とは聞きません。
気に障るようなカッコつけた態度や様子というのが「キザ」の語源であるならば、女性にも使えると思うのです。
なぜ「キザ野郎」とか「キザな男」など、男性限定の表現のようになっているのか、疑問を感じます。
そこで、「キザ」の語源をもう少し深堀りして調べてみました。
この言葉が世の中に広まったのは江戸時代と言われていますが、どうやら遊郭から広まったのではないかという説があるのです。
遊郭と言えば吉原が有名です。
江戸の街の一角にある歓楽街からは、様々な文化が生まれたと言われています。
「キザ」は遊郭に遊びに来る男性に対して、そこで働く女性たちが皮肉を込めて使うようになったのが始まりだと言う俗説があるのです。
吉原では、どれほど立派な武士でも、お金持ちでも、花魁に気に入られないと遊ばせてもらえなかったそうです。
古典落語の中では、遊郭を舞台にした噺が数多くあります。
花魁の気に障るような男は「キザなやつ」と陰口を叩かれていたのが語源だと考えれば、女性に使わないのは不思議ではありませんね。
気取った態度でカッコつけているお客のことを伝える、業界の隠語的な言葉が始まりだったのではないかと考えられるのです。
だとすれば、「キザ」は男性に使う言葉として広まったのも納得できますね。
まとめ
キザが気障という字で書けば、「気に障る」ことが語源になったと想像できますよね。
カタカナ表記される言葉が増えると、語源もわかりにくくなるのでしょう。
キザは気に障ることが由来になったとわかれば、使い方もわかりやすくなるのではないでしょうか。