「恩着せがましいことしないで」など、いかにも恩に着せるようなことをされる時に「恩着せがましい」と言いますね。
では「お仕着せがましい」はどうでしょう。
聞いたことがあるような、でもちょっと違うような・・。
そんな感じの人が多いのではないでしょうか。
「お仕着せがましい」という言葉がほんとに使われているのか、解説しましょう。
「お仕着せがましい」とは
「お仕着せがましい」という言葉は、「恩着せがましい」の誤用です。
似ている意味の言葉として変化したのではなく、誤用なので「お仕着せがましい」という言葉に意味はありません。
「恩着せがましい」とは、恩に着せるようにするさまです。相手のためを思って親切にしているようでも、ありがたがらせるためであり、かえって迷惑がられたりすることです。
「お仕着せ」とは
「お仕着せがましい」という言葉は間違いですが、「お仕着せ」という言葉はあります。
「お仕着せ」とは、
一方的に上の立場から与えるもの
という意味です。
この意味から、上から有無を言わせず押し付けられることを「お仕着せがましい」と表現したのかも知れませんね。
繰り返しになりますが、「お仕着せがましい」とは言いません。
そもそも「お仕着せ」とは、奉公人に主人が与える着物のことです。
江戸時代から昭和のはじめ頃までは、大きな商家には何人もの奉公人が住み込みで働いていました。
まだ幼い子供でも丁稚奉公として、衣食住付きでほぼ無給の奉公をしていたのです。
少し成長すると手代と呼ばれる立場に昇格します。
一人前の商売人になるために、働きながら教育を受けるので、わずかな給金しかもらえなかったのです。
「お仕着せ」は、主人が奉公人に与える衣服のことですが、そのことから、上の立場から一方的に与えることを「お仕着せ」というようになったのです。
「お仕着せの長口上」の意味
「お仕着せ」を使ったことわざに「お仕着せの長口上」があります。
このことわざは、
定番となっている決まりきった長い文句
という意味です。
パーティーなどでスピーチする時に、決まりきった挨拶を長々とする人がいます。
そのようなパターン化された長い話のことです。
定番の挨拶に対しては「お仕着せ台詞」とも言います。
主人が奉公人に与える衣類は、自分の好みは反映されず、型通りのものになるので、お仕着せは型通りのことを表現する言葉として使われることもあるのです。
今でも、職場で着るユニフォームや作業服が支給されることがありますよね。
それは「お仕着せ」から始まったのではないでしょうか。
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まとめ
「恩着せがましい」と間違えて「お仕着せがましい」と言ってしまう人がいるようですが、誤用なので気を付けましょう。