「上前をはねる」といえば、人のものを一部自分のものにすることとして使われます。
仲介料、紹介料、手数料などという名目などが引かれると「上前をはねられた」などと言います。
あまり好いイメージの言葉ではありませんよね。
では、「上前をはねる」の「上前」とは何の意味なのでしょう。
着物の前合わせの上になる側を上前と言いますが、それでは「上前をはねる」とはつながりがなさそうですよね。
いったい語源は何なのか、「上前をはねる」について解説しましょう。
「上前をはねる」の意味
「上前をはねる」とは
人の取り分の一部を自分のものにする
ことを意味します。
代金の一部、賃金の一部、品物の一部など、本来は受け取る立場じゃない人が一部を自分のものとすることが「上前をはねる」という意味です。
一般的に使われている意味と同じです。
「上前」の語源
「上前をはねる」の語源を調べると、上前とは上米が転じた言葉だったことがわかりました。
上米のルーツは、住吉神社という海の安全を守る神様への寄進が起源だったようです。
大阪は古くから商売が盛んな土地柄ですが、それは港を使った流通システムがあったからだと考えれられいます。
多くの船が寄港するのですが、安全に航海できるように住吉神社に米を奉納していたのです。
それがいつしか、まるで税金のように納めるのが義務のようになっていきます。
一定の量の米を徴収するようになると、徐々に人々から上米をとられることへの皮肉を耳にするようになるのです。
それが「上米をはねる」という表現になり、上米が上前に変化していったわけです。
本来は、神様に安全を祈願するために、自ら進んで奉納していたのですが、有無を言わさず徴収されるようになると、誰もがいい気持ちにならないでしょう。
しかも、それで海の安全が保証されたり、万が一の時に補償をしてくれるわけでもないのです。
それでは何のために上米を取られているのか、意味がわからなくなりますよね。
人々が皮肉から「上前をはねる」という言葉になっていたのでしょう。
今の時代でも、税金の徴収は容赦がありません。
義務として真面目に納めるだけです。
しかし、その税金が正しく使われているかどうか、疑いたくなることが度々ニュースで取り上げられます。
そうなれば上前をはねられた側としては、文句のひとつも言いたくなりますね。
「上前」の類語
「上前をはねる」の「上前」の類語と言えば、ピンハネです。
ピンハネの語源は賭け事の世界の隠語で数字の1のピンのことです。
人の報酬から一部をかすめ取ることなので、「上前をはねる」とほぼ同義語と考えていいでしょう。
どちらにも「はねる」という意味が含まれます。
この場合は「撥ねる」という字が入ります。
「撥ねる」には色々な意味がありますが、「上前をはねる」や「ピンハネ」に使われる場合は、一部をかすめ取るということです。
まとめ
いつの時代も税を徴収されるのを喜ぶ人はほとんどいません。
ですが、ほんとうに納めた税が正しく使われると信じられるのなら、頑張って納税するでしょう。
「上前をはねる」なんて言われるような税の使い方は、ほんとに勘弁して欲しいものですね。