「耳をそろえてお返しします」とか「きっちり耳をそろえてあります」など、「耳をそろえる」という言葉は聞いたことがあると思います。
この「耳をそろえる」とは、いったいどういう状態のことを表すのでしょう。
そもそも、誰の耳をそろえることなのかわかりませんね。
どうして耳なんだろう・・。
こんな疑問が湧いてきます。
なぜ耳をそろえるのか、その疑問を調べてみましたので、興味のある方は一緒に考えてみましょう。
「耳をそろえる」の意味
「耳をそろえる」とは、貸したお金を取り立てる際に、借金取りたちがよく口にする台詞です。
きっちりと貸したお金をそろえるという意味で使う言葉です。
「耳をそろえる」の語源
「耳をそろえて返してもらいたい」と金貸しに催促されたとしても、普通に考えると耳はそろえることはできませんよね。
耳は顔の左右についているので、そろえることは無理です。
なのになぜ「耳をそろえる」というのでしょう。
そもそも、この「耳をそろえる」という言葉の耳とは、端を意味しています。
なぜ端のことを耳にたとえるのか・・。
これは耳が顔の両端についていることが由来しています。
端のことを耳にたとえるのは、パンの耳がおなじみです。
他にも織物の両端のことも耳と呼びます。
つまり、「耳をそろえて」とは、貸したお金を端まできっちりそろえることだったのです。
お金の端をそろえることは、現代人は紙幣をそろえる様子を想像します。
ですが、この言葉が生まれた時代には紙幣ではなく大判や小判が流通していたので、大判や小判の縁をきちんとそろえた状態を表すのです。
体の部位を「そろえる」言葉
「耳をそろえる」とは、ほんに体の部位である耳をそろえることではなく、端に言い換えています。
他にも体の部位をそろえるという表現の言葉があります。
他の体の部位も「耳をそろえる」のように、別の意味の言い換えなのか見てみましょう。
口をそろえる
2人以上の人が、同じことを発言することを「口をそろえる」と言います。
足並みをそろえる
足並みをそろえるとは、複数の人が歩く速度をそろえることでもありますが、複数の人が同じ考え方で進むという意味で使います。
頭数をそろえる
頭数をそろえるとは、人数を集めることを意味します。
頭だけじゃなく、数を付けるのは、取り合えず人数だけかき集めるという意味合いがあるからです。
雁首をそろえる
雁首をそろえるとは、人が集まることです。
ですが、首ではなく雁首というのは、少し下品な表現です。
雁首とは、煙管の先を下向きにしたカタチを鳥の雁の首に重ねています。
それが、人が頭を下げている様子に似ていることから生まれた言葉です。
集まった人たちへの尊敬が感じられないので、品の良い言葉ではないわけですが、親しい間柄の仲間同士では悪意なく使っていたようです。
まとめ
「耳をそろえる」という言葉の耳が端のことだというのは、着物に親しんでいる人ならすぐにわかると思います。
着物の生地の両端のことを耳と呼んでいるので、端は耳というのは着物が日常の衣類だった時代には当たり前だったのではないでしょうか。