強請る(ねだる)と強請り(ゆすり)は同じ字を使います。
でも読み方は違います。
もしも「ねだる」ではなく「ねだり」となると「強請り」ですから、文字を見ただけではどちらの意味なのかわからなくなってしまいます。
前後の文章などで読み分けないと、違う意味で受け取ってしまいそうです。
なぜ「ねだる」と「ゆすり」は同じ「強請」なのでしょうか。
まさか意味が同じだったとか!!
「強請る」と「強請り」のそれぞれの意味から、共通するところがあるのか調べてみましょう。
「ねだる」と「ゆすり」の意味
強請る(ねだる)と強請り(ゆすり)が同じ漢字を使うのは、重なる意味があるからだと考えてしまいます。
それぞれの意味を見てみましょう。
強請る(ねだる)の意味
強請る(ねだる)とは、一般的には可愛らしく甘えてお願いすることを表しています。
意味を調べてみると、
普通にお願いしたのではできないことを、相手の好意に甘えるように頼み、求めること。
ということです。
ポイントは、「普通にお願いしたのではできないこと」と「相手の好意に甘えるように」です。
つまり、強請る側は、頼む相手が自分に好意を持っていることを承知した上で甘えて頼み込むことなのです。
孫が祖父母に、子供が親に。
また、彼女が彼氏に、彼氏が彼女になど、甘えてお願いすれば、聞き入れてしまう相手に対して頼み込むことが「強請る」ことなのです。
「おねだりする」とか「おねだりされた」など、耳で聞くのと「強請る」という文字で見る印象がずいぶん違うので、漢字で表すことはあまりないですね。
強請り(ゆすり)の意味
強請り(ゆすり)と言えば、無理に金品を巻き上げるような行為を表す言葉です。
強請り(ゆすり」の意味を調べると、
おどかしたりて動揺させたり、相手の弱みに付け込んだりして、無理に金品を出させること。
となっています。
強請り(ゆすり)と合わせて使われることがある集り(たかり)も、相手の弱みに付け込んで、無理にお金や品物を出させることです。
同じ字を使う理由
強請る(ねだる)と強請り(ゆすり)は、意味を見てみると、同じではありませんよね。
強請る(ねだる)のは、相手の好意に甘えることなので、おどかしたり、弱みに付け込んで無理に金品を出させることとは違います。
でも同じ字を使って表すのですから、何か関係があるのではないかと思うのです。
そこで強請る(ねだる)の語源を調べてみると、同じ字で表す理由がわかってきたのです。
強請る(ねだる)の語源
強請る(ねだる)の語源は、江戸時代の花街で生まれた言葉だと言われています。
芸者や芸妓たちが、お客の心を揺さぶったのが「ねだる」の語源だと伝わっています。
心を揺さぶる言葉や素振りから、強請り(ゆすり)と同じ字を当てたのが強請る(ねだる)という字になった理由ということなのです。
つまり、「ねだる」のは、花街の芸者衆の使っていた業界用語のようなもので、そこに当て字として「強請」の字が使われたのです。
まとめ
「おねだり」を「御強請り」と書いてしまうと、甘えながらお願いする様子は想像できません。
文字の強さが言葉の意味と合わないような気がしますよね。
当て字から「強請る」となったのであれば、もっと意味にふさわしい当て字にしても良いのではないか・・と思ってしまいます。