「彼は捨て台詞を残して去っていった」
「別れ際に言われた捨て台詞が耳から離れない」
このように、別れるときに吐き捨てるような言葉を「捨て台詞」といいます。
捨て台詞は相手が喜ぶような内容ではなく、相手の心を傷つけるような言葉です。
ケンカしている者同士が、別れ際に相手に一方的に投げつけるように言うのが捨て台詞なので、うれしくはないですよね。
さて、この捨て台詞ですが、「セリフ」という言葉が入っているからには、やはり演劇などの芝居の世界の用語だったと推測できます。
この推測が当たっているのかどうか、捨て台詞の語源について調べてみました。
「捨て台詞」の語源とは
「捨て台詞」の語源は、やはり演劇から生まれた言葉でした。
日本の大衆娯楽として生まれ、その後は伝統芸能となった歌舞伎の舞台の用語として使われていたのが「捨て台詞」でした。
今は「捨て台詞」と言えば、相手に吐き捨てるように言う荒っぽい言葉という意味になっています。
ですが、本来の捨て台詞はそういう意味ではありませんでした。
歌舞伎の世界で生まれた「捨て台詞」とは、台本に書かれていない台詞のことです。
その場だけの台詞なので、「捨て台詞」と呼ばれるようになったのです。
台本にない捨て台詞を言う場面は、役者が登場したときや、舞台上から去るときだったので、現在のように別れ際に放つ言葉という意味に変わっていったと言われています。
「捨て台詞」と「アドリブ」の違い
「捨て台詞」の本来の意味は、台本にない台詞を役者が即興で考える台詞でしたが、今はそういう台詞のことは「アドリブ」と言われています。
「アドリブ」は、ラテン語がもとになっている単語です。
アドリブは、台詞などに限定されず、楽器の演奏や歌唱なども含まれます。
自由な行い、気ままなことを意味するアドリブという言葉が、即興で演者が自由に考える台詞という意味として世の中に広まっていったと考えられています。
「捨て台詞」と「決め台詞」の違い
「捨て台詞」に対して、特定の場面で使う台詞のことを「決め台詞」と言います。
即興的にその場で作った台詞とは違い、その登場人物にか欠かせない台詞が決め台詞なので、定番の台詞です。
ただ、定番ではあっても、そのキャラクターにか欠かせない台詞なので、観客もそのセリフを待っています。
決め台詞が出ると、大きな拍手が巻き起こるなど、盛り上がるのは必至なのです。
捨て台詞は、どんな言葉が出るのかわからないわくわく感ですが、決め台詞は「待ってました」という期待感があるのです。
台詞の語源とは
役者が台本に書かれたことはセリフと言いますが、なぜ台詞という字を書くのでしょうか。
セリフは台詞だけじゃなく科白という字で書くこともあります。
じつは台詞も科白も意味は同じです。
台詞は舞台詞がもとになっていると言われており、江戸時代から使われています。
科白は中国の言葉が由来になっていると伝わっています。
台詞も科白もセリフの当て字だったわけです。
もっと古くは「世利布」や「世流布」など、時代によってさまざまな文字で表していたようです。
まとめ
「捨て台詞」は、歌舞伎から生まれた言葉だったのは、予想通りでした。
今の世の中で歌舞伎とはまったく関係ない世界でも、普通に使われる言葉にも、歌舞伎由来が数多くあります。
まだまだ知らない歌舞伎をルーツに持つ言葉があるのでしょう。
そういう言葉を探すのは、楽しいですね。