「下手の横好き」と「下手の横槍」は1文字違うだけです。
好きと槍(やり)が違うだけなので、間違えて使ってしまいそうになることもあるのではないでしょうか。
ですが、「下手の横好き」と「下手の横槍」とでは意味が全く違います。
似たような言葉として勘違いしそうになったことがあるのなら、それぞれの意味をチェックしておきましょう。
「下手の横好き」と「下手の横槍」の意味
「下手の横好き」と「下手の横槍」の2つの慣用句は、類義語ではありません。
それぞれの意味や使い方を見ていきましょう。
「下手の横好き」の意味とは
「下手の横好き」とは、下手なのに好きで仕方なくて、熱心になっていることがあるという意味です。
「横好き」というのは、上手いわけでもないのに好きなことなので、さらに「下手」を付けるのは謙遜する言葉だからです。
たとえば、このような使い方をします。
あら、素敵な化粧ポーチね。
ほんとに?嬉しい。
もしかして、手作りなの?
恥ずかしいけど、私の自作です。
すごく器用なのね。
いえいえ、下手の横好きなの。
ただ好きで見よう見まねだからちっとも上達しないの。
そんなことないわよ。
好きこそ物の上手なれって言うじゃない。
このように自分の趣味を謙遜する言い回しに使います。
また「下手の横好き」に対して、「好きこそ物の上手なれ」という言葉があります。
好きなことは上手になるための基本という意味です。
「下手の横好き」が自分を謙遜するための使う言葉であるのに対して、「好きこそ物の上手なれ」は人を励ます時に使うことが多いのではないでしょうか。
「下手の横槍」の意味とは
「下手の横槍」は、関係のない者が横から口出しをするという意味の言葉です。
当事者よりも、関係のない第三者の差し出口のことを指しています。
差し出口とは、差し出がましく口を挟むことです。
出しゃばった物言いのことを差し出口と言うので、「下手の横槍」は余計な口出しをする第三者のことを批判する言葉です。
横槍は、横から槍をつき出すことで、戦いの場ではとても邪魔です。
横から余計な口出しをする迷惑な人に対して使います。
使い方の一例を見てみましょう。
今回の企画に部長はほとんど関与していないはずだよね。
そうだよ。
まったく、これまでの経緯も知らないのに会議にだけ顔を出して下手の横槍を入れるから、無駄な説明をしなくちゃいけなくて長引ちゃったよね。
下手の横槍のおかげで今日も残業だ・・。
このような使い方をします。
下手の意味の違い
「下手の横好き」と「下手の横槍」は、意味が全く違いますから、使う場面を間違えないように気を付けなければいけません。
ここで1つ気になったことがあります。
「下手」という言葉の意味の違いです。
「下手の横好き」は上手⇔下手の意味です。
上手くないけれど好きだから下手という言葉を使っています。
「下手の横槍」の方は上手の対義語である下手ではありません。
こちらの下手は、中途半端なこと、生半可なことという意味です。
結果が悪くなるような余計なことという意味として「下手なことはしない」とか「下手に口出ししない」ということなのです。
わずかに違う2つの慣用句ですが、同じ「下手」でも意味が違うのですね。
まとめ
「下手の横好き」と「下手の横槍」はぼんやり聞いていると同じ意味だと勘違いしてしまいそうです。
こういう似た言い回しの言葉が多いのがややこしさを増しているのですが、それが日本語の奥深さや面白さとも言えるのでしょうね。
言い間違いには気を付けましょう。