「こそばいからやめて」とか「そこはこそばいところだわ」など、「こそばい」という言葉をあなたは使いますか?
じつは「こそばい」を使うのは全国的ではありません。
ですが、かなり広い範囲で使われているので、方言という認識のないまま「こそばい」を使っている人もいると思います。
ただ、「こそばい」が方言だと知らなかった人も知っていた人も含めて、語源を知っている人は少ないのではないでしょうか。
今回は「こそばい」という方言の、意味や語源について解説します。
「こそばい」の意味とは
「こそばい」は、標準語の「くすぐったい」という意味の方言です。
「くすぐったいからやめて」を「こそばいからやめて」と言うのです。
「こそばい」ではなく「こしょばい」という人もいますが、地域が分かれるわけではなく、使う人によって「こそばい」か「こしょばい」になるだけです。
「こしょばい」を使う人は、くすぐる擬音として使われる「コショコショ」と「こそばい」が混ざったのではないかと考えられます。
「こそばい」を使う地域
「こそばい」は、大阪、三重、和歌山を中心に使われています。
愛知や岐阜などでも使われるので、かなり広く分布した方言だと思います。
筆者は愛知県出身なので、「こそばい」はよく使っていました。
もちろん、方言とは知らないまま使っていましたね。
関東圏では使われないのですが、「こそばい」と聞いて「くすぐったい」という意味だと分かる人もいますので、認知度の高い方言なのではないでしょうか。
「こそばい」の語源とは
「こそばい」の語源は、「くすぐる」ことを表す擬音の「こそこそ」の「こそ」が由来になっていると考えられています。
「くすぐる」という言葉は、もともと「こそぐる」だったので、「こそばい」という表現は標準語の「くすぐったい」よりもずっと前から使われていたはずです。
「こそばい」の「ばい」は「はゆし」という表現が変化したと言われています。
もともとは「こそばゆし」と言っていたのが「こそばい」になっていたのでしょう。
「はゆし」という言葉の意味は、何となくムズムズして居心地が悪いことを表しています。
くすぐったくてムズムズして、じっとしていられないという表現として「こそばゆし」から「こそばい」になり、大阪や和歌山、三重県などの地域で残る言葉になったのです。
「こそばゆし」という語源になった表現を少し変えて「こそばゆい」と言う人もいます。
くすぐる擬音を「コショコショ」と言う人が「こしょばい」を使うのと同じように、「こそばい」のアレンジは他にもあります。
くすぐる擬音を「コチョコチョ」と言う人は「こちょばい」と表現する人もいます。
くすぐる動作の擬音によって変化するので、方言でありながらも使う人によって微妙に違うのでしょうね。
「こそばい」≠「くすぐったい」の使い方
「こそばい」の意味としては「くすぐったい」で間違いないのですが、くすぐられた時の反応の言葉以外にも使われます。
それは、体に感じるくすぐったさではなく、気持ちのくすぐったさです。
例えば褒められたときに、照れくさいのをごまかすように「そんなに褒められるとこそばいわ」などと使います。
照れくさくて、ムズムズして、落ち着かない・・という感じの表現ですね。
「くすぐったい」と「かゆい」の違い
西日本で多く使われる「こそばい」や「こそばゆい」は、「くすぐったい」よりも前から使われていた言葉と考えられます。
ムズムズするという意味の「はゆい」が入っているからなのか、西日本では「くすぐったい」ことを「かゆい」と表す地域もあるようです。
わきの下や足の裏など、敏感なところをこちょこちょとくすぐられて「かゆい」と表現する地域があるのですから、不思議です。
そういう地域では、くすぐったい時も痒みを感じている時も、どちらでも「かゆい」を使うようなので、他の土地の人たちは不思議でしょうね。
まとめ
「こそばい」を使っている地域に暮らす人にとって、「くすぐったい」という言葉を使うのは、ムズムズしてこそばいのかも知れませんね。
また、「こそばい」は予想以上に広く使われている可能性もあるので、「くすぐったい」との比率も知りたいと思ってしまいました。