「どこで油売ってたんだよ!」なんて叱られた経験はありますか?
油を売るのは叱られることなの?と不思議に思ったことはないでしょうか。
油を売ることが悪いこととして叱られたり、怒られたりすることと表現されるのはどうしてなのか調べてみました。
油を売る職業があった
油を売るのは、今で言うところの燃料を売る職業のことです。
今でこそわざわざ燃料を売りに来ることは無くなりましたが、昔は灯りのための油を売りに来る「油売り」という職業の人がいました。
電気もガスもない時代のことなので、油売りはとても大切な職業です。
油を売るのが悪いことになった由来
油を売るのはちゃんと仕事をしているのですから、「どこで油を売ってたんだ!」と叱られるのは納得できないですよね。
このような表現がされるのは、本物の油売りに対してではありません。
他の職業の人が、ムダ話をしていて仕事の手が止まっていたり、用事のために出かけたのにムダなことに時間を使っている時に油売りを引き合いに出して使われるようになりました。
油売りがお客の家まで行って油を売る時に、きっちり測った油をこぼさないようにゆっくりと時間をかけます。
慌てて油をこぼしてしまうと勿体ないのです。
油というのはサラサラしているように見えても水のようなわけにはいきません。
すこしトロっとしているので、扱う時も慎重になります。
こぼしてしまうと水のように乾きませんから、その点でもゆっくりとこぼさないように時間をかけるのが油売りだったのですね。
それほど油は貴重な燃料だったわけですが、その時間が長いので、油売りはお客さんと世間話をしていました。
その様子から、世間話を長々としている様子を「油を売る」と言うようになったのです。
油売りに似た職業
油を家々に売って歩く行商人が語源となった「油を売る」という表現ですが、油売りが存在した時代には、色んな行商がありました。
例えば落語の世界ではよく出てくる「くずや」です。
どんなものでも捨てずにくずやに買い取ってもらうのです。
今で言うところの廃品回収業ですね。
他にも水を売って回る行商もあったそうです。
江戸の町は一気に人口が増えたので、水道の設備もあったそうですが、それでも隅々までに水道が行き渡っているわけではなく、水の行商人がいたそうです。
重い水を売って回るのは重労働でしょうが、川の水や湧き水を汲んで売って回れば仕入れのお金は必要ありません。
まさにカラダ一つで稼げる商売です。
世界トップクラスの人口密集地帯だった江戸の町には、色んなアイデアで商売にする人が沢山いました。
行商の種類も数えきれないほどあったそうですが、本物の油売り以外の行商人が客の家で無駄話をしていると「油を売っている」ことになるのですね。
まとめ
油を売るというのが仕事の手を抜くことだと言われるようになったのは、油売りの人には不本意なことでしょうね。
油売りからしてみれば心外でしょうが、今では油の行商人はいません。
油を売る様子を想像できる表現なので、悪い意味として残ったとしてもそれはそれで良かったのではないでしょうか。