ことわざには、春夏秋冬に合わせて生まれた言葉があります。
その季節に応じて、生活面での注意点などを伝えるためのことわざも沢山あります。
夏のことわざを集めてみると、犬が使われるものがいくつかあるのですが、なぜ犬を使ったのでしょう。
ことわざには犬や猫などの身近な動物がよく使われるのですが、夏のことわざに猫が使われるものはほとんど知られていません。
犬がよく登場するのはなぜなのか、その理由を解説しましょう。
犬が出てくる夏のことわざ
夏のことわざの中で、犬が使われる主なものを3つ集めてみました。
それぞれの意味を含めてご紹介します。
夏の風邪は犬も食わぬ
夏に風邪を引くのは、とてもつまらないこと。
夏の風邪は犬も食わぬには、このような意味があります。
冬とは違い、風邪をひきにくいはずなので、夏風邪をひくのは不注意や不摂生が原因だと批判していることわざです。
今のように、犬の健康を考えて食生活を管理することなんてなかった時代には、何でも食べる犬でも見向きもしないほどつまらないものという意味を伝えるために、「夏の風邪は犬も食わぬ」として注意を促していたのでしょう。
「夏の風邪は犬でもひかぬ」とも言われます。
これは「夏の風邪は猿でもひかぬ」ということわざと混ざったものだと思われます。
いずれにしても、犬や猿などの動物に少し失礼な感じですよね。
夏の蛤は犬も食わぬ
蛤は、二枚貝の中でも高級なものです。
きっと犬だって美味しいはずなのですが・・。
じつは蛤の旬は2月~3月です。
4月になると産卵期を迎えます。
夏は産卵期を終えているため、味が落ちるのです。
とはいえ、犬が食べないほどマズくなるとは思えませんが、「夏の蛤は犬も食わぬ」ということわざによって、蛤の旬を伝えるために犬が使われたのでしょう。
夏の牡丹餅犬も食わぬ
牡丹餅は、牡丹の花が咲くころに食べるものです。
春のお彼岸のお供えものとして、牡丹餅を作ります。
ちなみに、秋のお彼岸には萩の花が咲くころなのでおはぎといいます。
同じお菓子なんですけど、季節によって呼び方を変えているのですね。
さて「夏の牡丹餅犬も食わぬ」ですが、このことわざには2つの意味があります。
1つは、暑い盛りの牡丹餅は美味しくないということ。
2つ目は、夏は牡丹餅も痛みやすいので、早く食べなければいけないということ。
この2つの意味を伝えるのに、犬を使うのは、美味しくないものや腐っているものは、犬でも避けるということなのでしょう。
犬が夏のことわざによく使われた理由
夏のことわざに犬が出てくる理由は、犬が何でも食べる動物だと思われてきたからだと考えられます。
例えば「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」ということわざがあります。
夫婦喧嘩は他人から見ればじつにバカバカしくて、つまらないことだという意味です。
夫婦喧嘩なんて、犬じゃなくても食べられるわけないのですが、何でも食べる犬でも呆れてそっぽを向くほどバカバカしいと表現しているわけです。
犬からしてみれば、どんなものでも食べる動物の象徴のように使われるのは心外でしょうね。
愛犬家の方も怒るかも。
動物に対する考え方が違う時代に生まれたことわざなので、そこは理解しましょう。
犬が見向きもしないという表現は、誰も見向きもしないほど嫌がられたり、呆れられることという意味として多くのことわざが生まれたのです。
まとめ
今回は、夏のことわざに限定して犬が使われる理由をまとめてみました。
夏のことわざに限らず、犬が登場することわざはとても多く、それほど人間のそばで生きる犬が多かったからでしょう。
犬は昔から人に寄り添ってくれる存在だったのですね。