「濡れ衣を着せられる」と言えば、何も罪を犯していないのに、無罪を被せられることです。
誰かの悪意によって、身のおぼえのないことなのに濡れ衣を着せられるなんて経験はしたくないですよね。
でも、なぜ無実の罪を被ることを「濡れ衣を着せられる」と表現するのでしょうか。
誰かが罠を仕掛けるとか、誰かに陥れられるなど、表現する言葉として「濡れ衣を着せる」とは不可解です。
そこで、濡れ衣の語源や由来について調べてみました。
濡れ衣の由来になった説
「濡れ衣を着せられる」の由来になった説として伝わっているのは1つではありません。
日本全国では、色んな説があるようです。
その中でも、有力な説と言われているのが4つあります。
海女さんが由来になった説
海に潜って魚貝をとる海女は、薄い衣を着たまま潜ります。
海女さんの衣が濡れているのは、ごく当たり前のことです。
この海女さん説が由来になったと言われる理由は、古い言葉で潜ることを「かずく」と言い、被ることも「かずく」と言っていたため、それが無実の罪を被せられることにつながったという説があります。
神話が由来になった説
古い神話が由来になったという説は、衣を濡らす占いがもとになったと言われています。
衣を濡らす占いは、自分自身に何か疑いがかけられた時に、潔白を証明するために行われたという説が神話に残っているのです。
衣が濡れたままだと、無実の罪を晴らすことができないので、この占いが濡れ衣の由来になったと言われています。
古今和歌集のなかの歌が由来になった説
古今和歌集の中に「濡れ衣」という言葉が出てきます。
かきくらし ことはふらなむ 春雨に 濡衣きせて 君をとどめむ
この歌の意味は、愛おしい人が帰る前に雨が降れば、その春雨のせいにして引き留められるのに・・という恋の歌です。
しかし、すでにこの歌が詠まれた時には、「濡れ衣」はその責任を被せる意味として読み解いているのなら、この歌が語源や由来になったのは違うのではないでしょうか。
継母の意地悪説
継母とは、父親の再婚相手のことです。
継母が意地悪をするのは昔話や童話の定番のようになっています。
濡れ衣の由来になった説として残るのが継母の意地悪から起こった悲劇です。
美しい娘のいる男は、妻に先立たれて後妻を迎えます。
その後妻は継子である娘をとても大切にしている夫の様子をみて嫉妬心をメラメラと燃やします。
美しい継子の中に先妻を重ねてしまうので、余計に嫉妬するのです。
そのうち自分にも娘が生まれると、先妻の子供である継子が余計に邪魔になります。
そこで継母は継子が漁師の男と許される関係になっていると夫に告げ口をします。
漁師の衣を濡らして、継子が眠っているところにその衣を被せて証拠を父親に見せたのです。
それに激怒した父親が娘を斬捨ててしまったという悲しい話です。
この話はかなり古い時代のことですが、福岡県には「濡衣塚」という塚があるので、実話がもとにうなったと言われています。
もっとも有力な説は?
無実の罪を被せられることを「濡れ衣を着せられる」というのは、継母の意地悪な嫉妬心が生んだ悲劇が由来になっているというのが一番有力です。
濡衣塚という塚が今でも残っているので、信ぴょう性も高いからではないでしょうか。
しかし、それが実話がもとになったのかどうかは確かめる術もないので、あくまでも諸説あるうちの有力な説ということしか言えないのです。
それにしても、許される恋に落ちたからといって、娘の命を奪うなんて考えられないことです。
それほど衝撃的なことなので、そのことが由来になったと考えれば、今の時代まで使い続けられるほど強い印象を残す言葉として広まったのではないでしょうか。
まとめ
濡れ衣の語源として伝わっているお話は、あまりにも悲しいですね。
無実の罪を被せられることなんて、自分の身には怒って欲しくないものです。
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