「胡椒の丸のみ」という言葉を聞いたことがありますか?
胡椒と言えば家庭で使われることが多いスパイスです。
飲食店では、テーブルに胡椒のビンが置いてあることもあるほど定番です。
その胡椒を用いたことわざなので、多くの人が理解しやすいはずです。
ですが、ことわざや慣用句としてはあまり有名ではないので、初めて見聞きしたという方も多いと思います。
どんな意味なのか、どのような時に使えるのか解説します。
「胡椒の丸のみ」とは
「胡椒の丸のみ」とは
物ごとは、よく吟味しなければ真偽はわからない。
また、表面だけで判断してはいけない。
という意味があります。
胡椒は、ブドウの果実のように房になって実ります。
粒を乾燥させて、それを砕くことでスパイシーな辛味が出ます。
つまり、胡椒の実を丸のみしたとしても、胡椒特有のあの辛味を感じることはありません。
砕いてこそ、胡椒の特徴である辛味を感じるわけです。
そのような胡椒の特徴を引き合いに出しているのが「胡椒の丸のみ」という慣用句なのです。
物事を表面的に見るだけでは、真偽を突き止めることはできないので、しっかり吟味しなければいけないという教えが込められているわけですね。
胡椒はいつから日本にある?
現在ではスパイスの定番になった胡椒ですが、和食よりも洋食に使われるイメージがあります。
「胡椒の丸のみ」ということわざがいつからあるのか不明ですが、胡椒はもともと日本にあったわけではなく、海外から伝わったものです。
さかのぼると、8世紀ごろには日本に伝わっていたという説があります。
ただ、庶民の間で胡椒が使われるようになったのは、江戸時代からです。
江戸時代には、うどんに胡椒を入れて食べていたそうです。
今はラーメンに入れることはありますが、うどんに胡椒とは、江戸時代の人は斬新なことを考えますね。
江戸時代後半になると、七味唐辛子をうどんの薬味として使うのが流行ったので、胡椒をうどんに入れる食文化はなくなってきます。
ですが、胡椒も唐辛子も体を温める作用があるので、どちらも寒い時に食べるうどんに入れていたのでしょうね。
「胡椒の丸のみ」と似ている言葉
「胡椒の丸のみ」と同じような意味の言葉に「甘草の丸のみ」があります。
甘草とは漢方薬の原料として使われる有名な植物です。
甘草に含まれるグリチルレチン酸ジカリウムは、炎症を置避ける作用があります。
風邪薬などにもよく使われていますし、皮膚の炎症や荒れを抑えるために化粧品などにも幅広く使われています。
また、甘草は文字通り甘味を含む植物です。
甘味料にも古くから使われてきたのですが、甘草の甘さはよく噛まないと感じません。
胡椒と同じように、そのまま飲み込んでも甘さを感じないことから「甘草の丸のみ」という言葉が生まれました。
「胡椒の丸のみ」の使い方
「胡椒の丸のみ」の使い方を例文で見てみましょう。

私が結婚するって噂が広まってるの。

誰かにそんな話をしたの?

してないよ。だって結婚の予定なんてないもん。

じゃあどうしてそんな噂が流れるんだろう。

たぶん、A先輩の嫌がらせだと思う。
私を辞めさせたいんだよ、きっと。

なんか根拠あるの?

ないけど・・。

じゃあそんなこと言わない方がいいよ。
証拠もないのに。

でもさ、A先輩っていつも私の嫌がる仕事ばっかり押し付けるし、嫌われてる感じがビシビシくるんだもん。

でもほんとのところはわからないじゃない。
よく真実を調べもしないで決めつけるのは良くないよ。胡椒の丸のみって言うでしょ。

そうだね。
確かめるのも難しいから、噂が消えるのを待つしかないか。
こんな会話で使える言葉の表現なのです。
「かみ砕く」のは食べ物だけじゃない
「胡椒の丸のみ」や「甘草の丸のみ」と無関係ではないと思える言葉の表現として「かみ砕く」があります。
「もっとわかりやすくかみ砕いて説明して欲しい」という時などに使いますよね。
人に何かを説明する時には、相手が理解できるように話すことが重要です。
しかし話の内容が複雑だったりすると、自分の頭の中で理解している通りに説明しても、それが上手く伝わらないことがあります。
わかりやすく話すことを「かみ砕いて」と表現するのは、細分化しなければ伝わらないということですよね。
食べ物じゃないのに「かみ砕く」という言葉で伝えるのは、「丸のみ」と通じるところがあるのではないでしょうか。
まとめ
「胡椒の丸のみ」も「甘草の丸のみ」も、よく噛まないと味がわからないという共通点のある植物を用いていることわざです。
たしかに、表面的なことだけで真実を確かめもせずに決めつけてしまうことはよくあります。
真偽を確かめるためには、しっかり吟味することは大切なことだと教えられることわざです。