【水道の水で産湯を使う】とはどんなことを意味している言葉なの?

ことばの雑学

「水道の水で産湯を使う」という言葉を知っていますか?

当たり前のことを言っているだけで、この言葉に意味があるなんて考えもしないのではないでしょうか。

ですが、この「水道の水で産湯を使う」には、そのまま言葉以外に伝えていることがあるのですよ。

どのような意味があるのか解説します。

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「産湯を使う」とは

産湯とは、生まれたばかりの赤ちゃんの始めての入浴のことです。

生まれたばかりの赤ちゃんをキレイにするための産湯は、その子が生まれた場所の水を使って湯を沸かします。

そのため、「産湯を使う」とは出生地を表す意味があります。
「男はつらいよ」シリーズの主人公、車寅次郎の有名なセリフに「生まれも育ちも葛飾柴又、帝釈天で産湯を使い」というくだりがあります。

帝釈天は柴又にある題経寺というお寺のことです。
帝釈天の井戸の水を産湯に使ったというのが、寅さんの有名なセリフになっているわけです。

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「水道の水で産湯を使う」とは

出生地を表すことなのに、「水道の水で産湯を使う」となると、どこの土地のことなのかわからないですよね。

ですが、「水道の水」こそが出生地を表すのです。

この言葉は、今の時代では意味が伝わりにくいのですが、江戸時代なら通用していました。

「水道の水で産湯を使う」とは、自分は江戸で生まれた生粋の江戸っ子だと自慢するための言葉だったのです。

江戸という町は、世界有数の人口密集地でした。
どんどん栄えていく江戸の町には、江戸幕府が莫大な資金を投じて水道が整備されていたのです。

人口がどんどん増えて、井戸水だけでは飲料水が不足してしまいます。

そこで江戸幕府が神田上水と玉川上水を整備したのです。
この時代に水道を整備したのは、世界の都市の歴史でもかなり珍しかったのです。

江戸っ子にとって、水道は自慢できることだったのでしょう。
江戸生まれを自慢するのに「水道の水で産湯を使う」という言葉が使われていたことからも、水道が江戸の人々の自慢できるポイントだったことがわかります。

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江戸っ子の定義とは

「水道の水で産湯を使う」は江戸っ子が自分の生まれを自慢するための言葉として使われていたようです。

しかし「江戸っ子は三代続いて江戸生まれじゃなきゃならない」なんて聞いたことはありませんか?

実際には江戸っ子の定義なんてものがあるわけじゃないのですが、江戸には日本各地から人が集まっていたので、古くから江戸に住んでいる人が新たに江戸に来た人に対して言っていたようです。

まとめ

「水道の水で産湯を使う」とは、江戸っ子が自分の生まれを自慢する意味がありますが、江戸という町の自慢でもあります。
地元自慢として水道を使うのは、江戸時代だからこそです。
今では当たり前の水道ですが、江戸時代に水道を整備したのはたしかに自慢できることですよね。