時代劇などではよく使われる「かたじけない」という言葉は、漢字で書くと「忝い(辱いと書くことも)」となります。
今ではほとんど使うこともないし、文章でも使うことがないので、かたじけないという漢字の表記があることも知らないのが当たり前です。
かたじけないという言葉は、時代劇をよく見る人なら耳馴染みがありますが、かなり古くから使われてきて、使い方も変化しているようです。
かたじけないの本来の意味
かたじけないというのは、本来は下の立場の人からお礼として使う言葉でした。
由来としては、「難気無し(かたしけなし)」という意味があったようです。
難気無しというのは、何か困ったことが起こった時に上の立場の人や実力のある人に相談して解決してもらった時のお礼の意味です。
「今回はあなた様の力を借りて解決することになってご迷惑をおかけしましたが、これからはご迷惑をおかけしないように気をつけます」という丁寧な謝罪とお礼の意味を込めた言葉が本来のかたじけないの意味でした。
本来の意味で使われていたのは中世までということで、戦国時代以降から変化してきたようです。
江戸時代には上下逆転
かたじけないというお礼の言葉が、立場の下のものから上の人に使うのが本来だったのに、時代劇を見ていると上から下に使っているようです。
例えば武士が商人に対して礼を伝える時にも「かたじけない」と使っています。
それに対して武士よりも立場が下の商人も同じように「かたじけない」とは言いませんよね。
このようなシーンでは、商人は「ありがとうございます」と普通にお礼の言葉を発しています。
いつから上から下に使うようになったのかハッキリしませんが、江戸時代になってからは上から下に言うお礼の言葉として定着しているようです。
時代劇の中だけの言葉使いだという説もあるので、演出的なことを考えて、現代では使わなくなった言葉を引っ張り出して時代の雰囲気を出すために武士に使わせたという推測をする説もあるようです。
現代でも使える
かたじけないというお礼は、現代でも使っても構わないのですが、由来のように下から上の人に言うのは誤解を招くので注意しましょう。
由来はどうであれ、現代では上から下に礼を伝える時に使うイメージが強くなってしまったから仕方ありませんね。
上司に向かって「かたじけない」なんて言ったら怒らせるかも知れませんので、使い方には十分に注意しましょう。
本来の使い方を知っている人の割合の方が少なくなっている今の時代では、使いにくい言葉になってしまいました。
よほど歴史好きで、本来の使い方を理解している者同士なら、
お先にどうぞ・・
これはかたじけない
というように使えるのでしょうが、くれぐれも誤解を生まないように気をつけてくださいね。
まとめ
歴史が好きな人なら、かたじけないとか普通に使いたくなる言葉ですが、長い間に使い方も変化していることはあまり知られていません。
言葉の変化を感じますね。